会長挨拶

mr_inoue

2021年6月に開催された定時総会に於いて会長に就任しました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

新型コロナウイルスは感染の発生から一年半余りが経過しましたが、今もなお、ワクチン供給の遅れや変異株の流行などにより、収束にはまだ時間を要すると思われます。新型コロナウイルスが海運業界にもたらした最大の問題は、船員交代への大きな障壁であり、船主に多大なコスト負担を強いる一方、船員にとっては、契約期間を超えた乗船が強いる精神的且つ肉体的な負担は我々の想像を超えるものと思われ、人道的な問題であるとともに、本船の安全運航に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況が続く限り、当協会としては、会員会社やその船員が直面している問題の解決に向けて微力ながらも力を尽くす所存です。これまで、下船したフィリピン人船員を帰国させるためのチャーター便の手配や、船員交代のためにフィリピンに直接寄港する船舶に対する港費の減免措置をフィリピン政府に働きかけて実現しましたが、こうした取組みには、日本だけでなく、関係各国の関連業界団体や労働組合、場合によっては政府の関連機関等のご理解とご協力が不可欠であり、今後も意思疎通や必要な情報交換等を継続していきます。

新型コロナウイルスは当協会の活動にも影響を及ぼしています。我々の活動は、大きく分けて二つあります。一つは、日本商船隊のFOC船に乗組む外国人船員の労働条件を整備するために、IBF(International Bargaining Forum)の枠組みの中で国際運輸労連(ITF)およびその加盟労働組合と交渉を行うことです。もう一つは、その交渉で合意された賃金タリフの一部を構成する基金を利用して外国人船員のための教育訓練や福利厚生の向上を図ることです。

前者については、2019年から2022年まで4年間有効な現行IBF労働協約に関して、後半2年間(2021年および2022年)の賃金アップ率の交渉が今年の9月まで約一年半延期されました。後者に関しては、日本商船隊に乗組む外国人船員の約7割を占めるフィリピン人を主として対象にマニラに於いて展開している教育訓練のための諸研修や、会員会社向けにキャデットを育成するフィリピンの海事教育機関であるMAAP校(Maritime Academy of Asia & the Pacific)での授業や、同校の練習船“Kapitan Gregorio Oca”号を用いた乗船実習などについて、コロナ禍の影響で平常時のような運営が難しい状況が続いています。新型コロナウイルスの収束状況を見ながら、可能なところからできるだけ早く平常時の状態に戻したいと考えています。

IBF労働協約の改定交渉および労使で管理する基金を用いた教育訓練や福利厚生に関する取組みは、それが究極的に日本商船隊に有能な外国人船員を引付け、ひいては安全運航の確保に繋がって欲しいという思いが根底にあります。当協会としては、IBF労働協約関連の交渉に於いては、賃金だけではなく、その他の労働諸条件についても、船主の立場も踏まえつつ、外国人船員から見ても納得でき、且つ受容可能な内容も意識しながら交渉に臨む所存です。一方、教育訓練・福利厚生については、会員会社からのニーズに基づいて有効且つ効率的な教育訓練を、会員会社に対する公平性を保ちつつ提供するとともに、全日本海員組合の理解と協力を得て福利厚生の拡充にも取り組みます。これらの活動を通じて、引続き優秀な外国人船員の確保と安全運航の維持・強化に貢献していく所存です。

コロナ禍による厳しい状況はなかなか終着点が見えませんが、当協会としては、これまで同様、会員からのニーズに迅速に応えることができるよう、透明性と公平性をモットーに柔軟かつスピード感を持って対応して参る所存です。今後とも皆様のご理解、ご支援並びにご協力を頂ければ幸いです。

国際船員労務協会 会長 井上 登志仁